♠N
深い闇が辺り一面覆い尽くし、月の光さえも遠く届かない地下深くに彼女はいた。
あどけなさが残る彼女は……光を感じることができないのか、ただそこに繋がれていた。
あれは夢なのか幻だったのか……これはそれすら思い出せない。
だけど忘れられない、そんな一夜の話。
あどけなさが残る彼女は……光を感じることができないのか、ただそこに繋がれていた。
あれは夢なのか幻だったのか……これはそれすら思い出せない。
だけど忘れられない、そんな一夜の話。
―― BGM(5秒ほど) ――
♠
……いっつ。あれ……私はいったい。ここはどこ……何してたんだっけ。
夜が深い山の中、彼は目が覚めた。辺りには人の気配もなく、全身の痛みが彼に混乱をもたらしていた。
❤N
♠
そうだ。ギルドの依頼を達成しようと獲物を追ってたら……っつぅ。
あぁ、あそこから足を滑らせたのか参ったなぁ…。
とりあえず……っと(身体を少し動かす)。
よし、動きそうだ。
夜道は危険だ・・・いつまでもここにいるわけにはいかないな……
どこか休めるとこがあればいいんだけど……。
あぁ、あそこから足を滑らせたのか参ったなぁ…。
とりあえず……っと(身体を少し動かす)。
よし、動きそうだ。
夜道は危険だ・・・いつまでもここにいるわけにはいかないな……
どこか休めるとこがあればいいんだけど……。
彼は周りを見渡したが暗く何も見えてこない。そんな時……彼の耳にひとつの旋律が聞こえてきた。
❤N
―― BGM切り替え ――
♠
(少しの間)……これは歌?? こんな夜更けの森で……一体誰が。
誘われるように誘うように。
彼は少しずつその旋律の聞こえる方へゆっくりと歩を進めて行った。
しばらく進むと小さな洞穴の入口のようなところへたどり着き、恐れながらも彼は中へ足を進めたのだった。
不思議な音。その音に導かれて。
彼は少しずつその旋律の聞こえる方へゆっくりと歩を進めて行った。
しばらく進むと小さな洞穴の入口のようなところへたどり着き、恐れながらも彼は中へ足を進めたのだった。
不思議な音。その音に導かれて。
❤N
♠
……声はこっちの方か。
♠N
歩を進めた私の前には小さな入り口とは想像もつかぬほど
茫洋(ぼうよう)とした空間が広がっていた
その真ん中に彼女は……居た。いや、繋がれていた。
白く月の僅かな光だけが彼女を照らしていた。
茫洋(ぼうよう)とした空間が広がっていた
その真ん中に彼女は……居た。いや、繋がれていた。
白く月の僅かな光だけが彼女を照らしていた。
―― BGMが止まる ――
♠
……君は?
だ……だれ??
❤
―― BGM ――
♠
目が……見えないのか??
アナタは……だれ?妖精さん?
ごめんなさい…私には何も見えないけれど、居るのはわかるわ。
ごめんなさい…私には何も見えないけれど、居るのはわかるわ。
❤
♠
……歌につられてここに来たんだ。私の名は♠。君は……名前はあるのか?
私に名前は無いわ。いつからここにいるのか、どこから来たのか……自分がなんなのか…何もわからないの。
だけどここには花や湧水があるから、動物さん達が食べ物もくれるのよ?
だからここに私は居るだけ。
だけどここには花や湧水があるから、動物さん達が食べ物もくれるのよ?
だからここに私は居るだけ。
❤
♠N
繋がれている。そのはずなのに彼女は凛としていて、
儚げながらも私はそんな彼女に力強さを感じた。
儚げながらも私はそんな彼女に力強さを感じた。
♠
ひとりで……?ここにずっと?
おかしな方ね。さっきも言ったでしょ?ここには1人だけど独りじゃない。
花達や動物達だっているのよ? それにほら……
花達や動物達だっているのよ? それにほら……
❤
♠N
彼女が手を天に向かって仰ぐと、小さな光達が彼女を包むように舞い降りて
まるで踊ってるかのように取り囲んだ。
まるで踊ってるかのように取り囲んだ。
こうして精霊さん達も私と一緒に居てくれる。だから寂しくないのよ。
❤
♠
そう…なのか。
なぁ……一晩だけここにいても大丈夫かな? 少し道に迷ってしまって、朝にはここを発つから。
なぁ……一晩だけここにいても大丈夫かな? 少し道に迷ってしまって、朝にはここを発つから。
♠N
触れてはいけないのだろう。私の直感がそう告げた。
彼女がここにいる理由、そして繋がれている訳を。
彼女がここにいる理由、そして繋がれている訳を。
ええもちろん。おしゃべりできるのは……初めてかもしれないわね。アナタ……♠は何しにここへ?
❤
♠
魔物が出るという依頼を受けたけど、しくじってね。崖を少しくだってしまったみたいなんだ。
キミ……っていうのもなんだかいただけないな。
キミ……っていうのもなんだかいただけないな。
♠N
私は辺りを見渡すと彼女に視線を向け口を紡いでいた。
♠
……❤。キミのこと、❤って今は呼んでもいいかい?
❤……。すごい、とっても素敵な響きね!
ありがとう♠!
❤……ふふふ。私の名ね!
ありがとう♠!
❤……ふふふ。私の名ね!
❤
♠N
彼女は嬉々としてくるくる踊り出した。何も縛るものがない蝶のように。
そしてまた……あの音を奏でだしたのだ……。
そしてまた……あの音を奏でだしたのだ……。
―― BGM切り替え ――
♠
……綺麗な音だね。なんていう曲なんだい?
〜♪……? きょ…く? きょくってなにかしら?
❤
♠
ほら今君が歌った曲だよ。
この声のこと?? ……わからない。これは私が作ったのよ。
精霊さんや花の声が聞こえて、それを紡いだの。
ここには私は1人じゃないって、みんなが言ってくれてるから……想いを紡いだのよ。
精霊さんや花の声が聞こえて、それを紡いだの。
ここには私は1人じゃないって、みんなが言ってくれてるから……想いを紡いだのよ。
❤
♠
想いを……(息を飲む)
♠N
彼女が紡いでる音達は刹那さも秘めてるような美しい音色だった。
なぜ?どうして?
そんな疑問など消し飛ぶかのように透き通っていたんだ。
なぜ?どうして?
そんな疑問など消し飛ぶかのように透き通っていたんだ。
―― BGM切り替え ――
……もうすぐ夜が明けるのね。
❤
♠
えっ?
♠N
彼女が突然ぽつりと呟いた。
寂しげな…どこか遠くを見つめながら彼女が放った言葉に思わず驚きをもらしたんだ。
寂しげな…どこか遠くを見つめながら彼女が放った言葉に思わず驚きをもらしたんだ。
♠と過ごした時間とても楽しかったわ。楽しいとあっという間に時はすぎるのね。
でもダメ。日が昇る前にここを出ていって……?
でもダメ。日が昇る前にここを出ていって……?
❤
♠
もう少し❤と話したいんだ。ダメ……なのか?
♠……。ごめんなさい。私日が昇ると同時に記憶が無くなるの。
眠ってしまうのか……ただ忘れているだけなのか。
想い出が残っているうちに見送らせて欲しいのよ。
眠ってしまうのか……ただ忘れているだけなのか。
想い出が残っているうちに見送らせて欲しいのよ。
❤
♠N
そういうと、少し戸惑った笑顔をこちらへ向け
彼女は入口の方を指差しながら続けた。
彼女は入口の方を指差しながら続けた。
入口を出て一刻ほど歩いた後、くだりが見えてくるからそちらへ行って。
精霊さんが教えてくれたけど、その先にニンゲンのいる所があると。
精霊さんが教えてくれたけど、その先にニンゲンのいる所があると。
❤
♠
君も……❤も一緒に行かないか?!(少し必死に)
私はここを離れたら生きていけない。
それだけはわかるわ。
楽しかった…とても、とても。
あっという間だったけれど♠とおしゃべりしたこの時が。
私は忘れてしまうけれど 貴方が覚えてくれる限り、私は生き続けられるわ。
それだけはわかるわ。
楽しかった…とても、とても。
あっという間だったけれど♠とおしゃべりしたこの時が。
私は忘れてしまうけれど 貴方が覚えてくれる限り、私は生き続けられるわ。
❤
♠
……❤。わかった。ありがとう。
忘れないよ。君とのこと。
忘れないよ。君とのこと。
♠N
彼女の最後のほほえみが、
まるで突き放して欲しいと言っているかのようで、それ以上何も言えなかった。
私は自分の言葉を飲み込み、そっと視線を逸らした。
まるで突き放して欲しいと言っているかのようで、それ以上何も言えなかった。
私は自分の言葉を飲み込み、そっと視線を逸らした。
最後に……♠こっちに手を
❤
♠N
彼女に言われるまま、差し出された手に自らの手を乗せると彼女が握り返した。
暖かな光が辺りを包み、私の体を覆っていく。
じわじわと熱のようなものが伝わり、身体の痛みが引いていくのを感じた
暖かな光が辺りを包み、私の体を覆っていく。
じわじわと熱のようなものが伝わり、身体の痛みが引いていくのを感じた
これで大丈夫ね。最初にすれば良かったのだけれどすっかり忘れてたわ。(笑)
ありがとう♠。
では…さよなら。
ありがとう♠。
では…さよなら。
❤
♠
ありがとう❤。……さようなら。また……っ
♠N
そこで息を飲んだ。
また。
そんな時が来ないことを静かに感じたからだ。
また。
そんな時が来ないことを静かに感じたからだ。
―― BGM切り替え ――
♠N
彼女に背を向け歩き出し
少し進んだところで彼女がいる方から旋律が響き渡った。
花々が道を繋ぐように咲き誇り、まるで道案内されているかのようだった。
少し進んだところで彼女がいる方から旋律が響き渡った。
花々が道を繋ぐように咲き誇り、まるで道案内されているかのようだった。
―― 少しの間 ――
―― BGM切り替え ――
……大丈夫。♠に光の加護があらんことを……。
❤
日が昇り始め…、身体がギシギシと音を立てて崩れていく。
❤N
私は……私はここから出られない。
朝日を見ることは叶わない。
光さえも感じない。
だけど貴方と会えて喜びを感じた。
楽しさを感じた。
ほんの一夜のことだけれど、忘れない。永遠に……
朝日を見ることは叶わない。
光さえも感じない。
だけど貴方と会えて喜びを感じた。
楽しさを感じた。
ほんの一夜のことだけれど、忘れない。永遠に……
❤
♠N
あれからどのくらい歩いただろうか。
日がのぼり始めた時に振り返ったあの時……
洞穴の入口などどこにも見当たらなかった。
夢を見ていたのか……
化かされたのか……
確かに残る身体の感覚が、あれは本当の事だと告げているようだった。
山をぬけた先に見知った街が見えてきた。その瞬間。
空が光ったかと思うと、真っ白な羽根がほらひらと私の目の前に落ちた
日がのぼり始めた時に振り返ったあの時……
洞穴の入口などどこにも見当たらなかった。
夢を見ていたのか……
化かされたのか……
確かに残る身体の感覚が、あれは本当の事だと告げているようだった。
山をぬけた先に見知った街が見えてきた。その瞬間。
空が光ったかと思うと、真っ白な羽根がほらひらと私の目の前に落ちた
♠
……これは……。そうか君か。
(ちょっとほくそ笑むように)
(ちょっとほくそ笑むように)
―― BGM切り替え ――
あれは夢でも幻でもないそう告げるように彼の元に羽根がそっと届いたのだ。
信じたくないような嬉しい事。
信じられないような出来事。
どれも自分次第で嘘にも真にもなりうる。
誰が何かなど関係ない。
それは大切な想い出で
それは自分が紡ぐ記憶なのだと。
信じたくないような嬉しい事。
信じられないような出来事。
どれも自分次第で嘘にも真にもなりうる。
誰が何かなど関係ない。
それは大切な想い出で
それは自分が紡ぐ記憶なのだと。
❤N
♠
……。さぁ、また旅に出なきゃな。
―― 少しの間 ――
♠N
これは本当に出逢った彼女との想い出のストーリー。
大切なのは自分の気持ちなのだ。
そう。
誰であれ、想い出は自分次第で
闇にも光にもなるのだと。
忘れないで欲しい。言葉で心は暖かくできるのだということを。
大切なのは自分の気持ちなのだ。
そう。
誰であれ、想い出は自分次第で
闇にも光にもなるのだと。
忘れないで欲しい。言葉で心は暖かくできるのだということを。
fin