【場面1:玉座】
(観衆が勇者をほめたたえ、王が手を広げ、笑顔で彼に近づく)
王様
「おお、これは紛れもなく魔王の角! 勇者よ! 魔王討伐おめでとう! 貴殿には褒美として、一生食うに困らぬ金貨に、美しい我が娘を与えよう。そうして、ゆくゆくはこの国を導いておくれ」
みかげ
「いやぁ、そういうのはちょっと。荷が重いので、辞退します」
王様
「な?! なんじゃと?!」
みかげ
「平和になったら、のんびり各地を旅したいなと前から考えていたんです。それじゃあ」
王様
「そう言わず! 待ってくれ〜!!」
ナレーター
「追いすがる王様もなんのその、一礼だけして踵を返した勇者は鼻歌まじりに王国を旅立ってしまいました」
【場面2:森】
(木漏れ日がキラキラと差し込む美しい森の中で本を開く勇者)
みかげ
「ふむふむ。ドラゴン肉のステーキ! 味がガツンとしてるのにスっと舌でとけて美味しかったなぁ」
ナレーター
「切り株に腰を落ち着けて、『幻のグルメレシピ』をパラパラとめくっていた勇者の手があるページでぴたりと止まります」
みかげ
「あ! アルラウネの花びらジャム?これ食べたことない! 取りに行ってみようかな?」
さい
「もし、そこのお方。一人旅ですか?」
みかげ
「ん? ええ、そうです」
さい
「やっぱり! それほどの腕前でいらっしゃるのですね。実は私、冒険者になりたてでして。よろしければ、先輩に同行させて頂けませんでしょうか」
みかげ
「いいですよ。一人より二人の方が楽しいですから」
ナレーター
「はて、初心者がたいした装備もせず、ひとりでうろつくなんて危ないなと思いつつ、勇者は笑顔で頷きました」
【場面3:森2】
(茂みの中や、道の端から弱いモンスターが飛び出してくる)
さい
「スライムって、面白いですね。核を潰さないといくらでも再生する」
みかげ
「気をつけて。あまり近づくと顔にへばりついてきますよ...っと。あれ、珍しい。スノーラビットだ」
ゆき
「ひぃ! 人間に見つかった!! もうダメだ〜!僕は死ぬんだ〜!!」
みかげ
「しかも喋った! ユニーク個体かな?」
ゆき
「うう、見逃してください...。僕、悪いモンスターじゃないんです...」
さい
「どうします? ユニークなら高値で売れますよね」
ゆき
「わーん! 鬼、悪魔、魔王! やるなら、ひとおもいにやってくれ〜!!」
みかげ
「お家におかえり。気をつけてね」
ゆき
「い、いいの...?」
みかげ
「何も悪いことしてない無抵抗の子は、倒せないよ」
ゆき
「や、優しい...!! 優しい人間だ! すごーい! ねぇねぇ、人間は何しにここに来たの?」
みかげ
「僕の名前はみかげだよ。アルラウネの花びらを分けてもらいに来たんだ」
ゆき
「へ〜! まりちゃの! 僕、お友達だから、どこにいるのか知ってるよ! 一緒に頼んであげようか」
みかげ
「ほんとに? それは助かるなぁ」
さい
「いいんですか? この子も一応、モンスターですけど」
みかげ
「旅は賑やかな方が楽しいですからね」
さい
"......ふふ、先輩がそういうなら"
ナレーター
「ぴょんぴょん跳ねて道案内してくれるスノーラビットについて行くと、開けた空間にたどり着きました」
【場面4:森の最奥】
(発光する変わった植物やキノコが生えた幻想的な場所。泉の近くにアルラウネがいる)
ゆき
「まりちゃ〜!」
まりか
「あ、ゆきちゃん! いらっしゃい。また遊びに来てくれたの?」
ゆき
「今日はね、人間のお友達を連れてきたの!」
まりか
「人間...?」
みかげ
「こんにちは」
ゆき
「ね、珍しいでしょ? 僕たちとお話しようとする人間」
まりか
「...うん、確かにそうだね。ここにはなんの御用で?」
みかげ
「あなたの花びらを分けて貰えないかと思って来てみたんです」
まりか
「花びら? まあ、ほっとけばまた生えてくるので数枚でしたらいいですよ」
みかげ
「え、ほんとに? ありがとうございます」
まりか
「私も争いたいわけではないので、そんなことでよろしければ」
ゆき
「よっぽど無茶なお願いじゃなければ聞いてあげるのに、人間ってすぐ襲ってくるもんね〜」
まりか
"うんうん。逃げたいけど、私、足が根っこだから動けないし、迎撃するしかないんだよね...。お可哀想に魔王様も弱いモンスターを守って、統治してくれてるだけなのに勇者に襲われたらしいじゃないですか。お元気そうでよかったけれど"
さい
"ちょ、ちょっと、何言ってるんですか?"
まりか
"えっ...、あっ? すみません! なんでもないです!"
ゆき
"なになに? 魔王様、どうしたの? かっこいい角がなくなっちゃっても、かっこいいよ!"
まりか
"ゆきちゃん! しーっ!"
みかげ
"あ、やっぱり?"
さい
"えっ..."
みかげ
"いや、人間の姿にはなってるけど、なんか聞いたことある声だなぁってずっと思ってて。その節はどうも"
さい
"えっ、なに、ばれてたんですか?!"
みかげ
"だって、結構不自然でしたよ。色々と"
さい
"まじかぁ。せっかく、魔王業やめれたので面白そうなあなたとのんびり旅しようと思ってたのに"
みかげ
"いや、別に。元魔王でも全然いいですよ。一緒に行きましょう"
さい
"えっ、ほんとに? しがらみとかないんです?"
みかげ
"僕以外、気づかないと思うから大丈夫ですよ。それよりも角は大丈夫ですか? ちゃんと退治した証拠を持ってかなきゃいけなくて頂いちゃいましたけど..."
さい
"ああ、それは伸びすぎた爪みたいなもんなんで生えてくるからいいんですけど"
みかげ
"......よかった"
ゆき
"いいなぁ、楽しそう! 僕もついて行っていい?"
まりか
"私もって言いたいところだけど、ゆきちゃんのお土産話を楽しみに待ってますね"
ゆき
"えー!せっかくだから、まりちゃも一緒に行こうよ!"
まりか
"でも..."
さい
"根っこ掘り起こして植木鉢にいれたら何とかなりません?"
ゆき
"その手があったか!"
まりか
"え、え、でもそれ、文字通り、お荷物になっちゃうんですけど"
みかげ
"のんびりした旅だから構いませんよ。じゃあ、改めてパーティを組みましょうか!"
みかげ
"...あ、ちなみに魔物グルメとか倒したりだとかって皆さん大丈夫ですか?"
さい
"哺乳類みたいな括りなんで、知性もってなさそうなら別にいいですよ"
まりか
"そうですね。それに、目が血走ってるモンスターとか普通に犯罪者の方多いですし。やられる前にやれは鉄則ですからね"
ゆき
"襲ってくる子は悪い子だから、僕も戦うよ!"
みかげ
"そんな感じなんですね。異文化交流だなぁ"